南杏子「ヴァイタル・サイン」読んだ感想

みなさん、こんにちは!ななとまです。ここ最近急に暑くなってきましたが、いかがお過ごしですか?今回は南杏子さんが書いた「ヴァイタル・サイン」を読んだ感想をご紹介します。ネタバレが嫌な方はあらすじまでお読みください。また、私個人の感想を書いているので、小説の捉え方が違う場合は一個人の意見として温かい目で読んでいただけると幸いです。

あらすじ

二子玉川グレース病院で看護師として働く堤素野子は、31歳になり今後のキャリアについても悩みながら忙しい日々を過ごしていた。患者に感謝されるより罵られることの方が多い職場で、休日も気が休まらない過酷なシフトをこなすが、整形外科医である恋人・翔平と束の間の時間を分かち合うことでどうにかやり過ごしていた。
 
あるとき素野子は休憩室のPCで、看護師と思われる「天使ダカラ」という名のツイッターアカウントを見つける。そこにはプロとして決して口にしてはならないはずの、看護師たちの本音が赤裸々に投稿されていて……。心身ともに追い詰められていく看護師たちが、行き着いた果ての景色とは。

主な登場人物

堤 素野子(主人公):とても真面目な性格で、日々患者と向き合おうとしている。
大原 桃香:素野子の後輩。自分の学歴に誇りを持っている。
小山田 貴士:新しく入ってきた新人。元は引っ越し業者で働いていた。

感想1 とにかく全ての看護師さんたちに感謝

私は幸いなことに小さい頃から体が丈夫で、大きな病気をしたことがありません。でも、自分の祖父が病気で入院してる時にいつも丁寧に対応してくださった看護師さんたちがいたことを覚えています。特に、死に何度も直面する病院で働いてくださっているお医者さんはもちろん、看護師さんたちに改めて感謝の気持ちでいっぱいでした。

小説ではとにかく看護師が足りなくて、(途中戦力だった主任も退職してしまって、余計ハードなシフトになってました)常に寝不足、頭が働かない、体がだるい状態でも働いている主人公を見て、自分を犠牲にして働きすぎてると感じました。コロナ禍やテクノロジーが発達して、負担が少なくなったのかもしれませんが、それでもどうしても人が対応しないといけないタスクがたくさんあるのだと思います。

読んだ感想2:主人公の心情が重なって苦しい

職業に優劣をつけるつもりはないですが、お医者さんや看護師さんは人の命に関わる仕事なので、より責任が重いですよね。常に死と隣り合わせ。自分の行動でその人の命に関わることも、、、主人公の素野子が小説の途中で自分がやった仕事に対してだんだん自信がなくなっていく描写があって、胸が苦しくなりました。

私は看護師ではないので、気持ちが100%わかるわけではありませんが、仕事をするということは自分がやったことには責任が伴うことをつくづく感じています。本当にこれが良かったのか、失敗した時はまた同じミスをしないためにはどうしたら良いのか、トライアンドエラーの繰り返しですが、看護師の場合は一つのミスで命取りになることも。どんな仕事にも責任が伴いますが、医療従事者はその責任は別格ですよね。

読んだ感想3:看護師は体力勝負

高齢者の方だと、自分で体を支えられなかったり、一人でトイレに行けない方もいらっしゃいます。そんな方には看護師が支えて、転ばないよう、怪我しないよう細心の注意を払って手伝いされている描写がありました。高齢者は少し転んだだけで骨折してしまう可能性もあります。そこからしばらく歩かなかったりすると、筋肉が落ちて寝たきりになってしまうというケースもあります。いくら、高齢の方で体重が軽いと言っても人一人分の重さを支えるには体力が必要です。

しかも1日に何度も患者さんの容態を確認をするために院内を巡回。そして不規則なシフト。体力がないとこの過酷な日々を乗り越えられませんよね。

読んだ感想4:恋人との関係がどうなるか最初からなんとなく予想できた

素野子には整形外科医である恋人の翔平がいました。相手もお医者さんということもあって、なかなか予定が合わない中でも時間を見つけて会っていた2人。仕事が常に緊迫した状態とは裏腹に、2人の関係はとても良好で、それが逆に違和感を覚えました。それが物語後半で翔平が3年間海外留学することを素野子に告白。素野子は翔平が3年待っていてくれるか、もしくは一緒についてきてくれないかと言ってくれることを期待していました。でも翔平はそんな言葉は素野子にかけなかったのです。自分はその程度の存在なのかと途方に暮れる素野子。

素野子はこの過酷な日々から翔平が連れ出してくれると期待してたのだと思います。でも仮に素野子が翔平についていった場合、素野子は現地で看護師をしていたのでしょうか?過酷すぎる労働環境だったと思いますが、患者一人一人にしっかり向き合う姿勢を持ち続けた素野子にとって看護師は天職だったのだと思います。

読んだ感想5:今なら少し理解できる看護師の忙しさ

小説で患者さんが残念ながらお亡くなりになるシーンが何度かあります。患者の家族は患者の最後を看取るために病院にいました。いつ急変してもおかしくない状況。患者の家族からしたら、もう助からないことはわかっていても、それでも傍にお医者さんや看護師さんがいてほしい気持ちは痛いほどわかります。

でも、素野子が他の患者さんの対応にいかないといけなくて、その患者を跡にする描写がありました。素野子は自分の仕事をしただけなのですが、患者の家族にとってはえっ、患者を見捨てるのかみたいな見捨てられた感を感じたのではないでしょうか。

でも看護師さんがつきっきりで1人の患者に時間を費やすことはできないんですよね、、、他の患者さんの様子を見ないといけないし、、、

読んだ感想6:リアルな終わり方だった

小説によっては小説だからこそできるハッピーエンドのものもありますが、この小説はいい意味でリアルな終わり方でした。何か奇跡が起こったりしたわけではなく、ただ日々患者と向き合う1人の看護師を間近で見たような小説でした。看護師目線でよりリアルに描かれた小説はなかなかないのではないでしょうか?

おわりに

いかがだったでしょうか?もし「ヴァイタル・サイン」を読んだ方がいらっしゃれば、ぜひあなたの感想を聞かせてください!そのほか、おすすめの小説を教えてもらえたら嬉しいです。では、また次の記事でお会いしましょう。

プロフィール
ななとま

ブログ運営者のななとまです。
語学学校に1年間通ってから正規留学でサンフランシスコ州立大学に留学経験あり。留学に役立つ情報などを発信できればと思います。

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